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がくルカで番凩

がくルカで番凩

がくルカ強化週間の産物。

「黄昏の歌」のリオさんがこのイラストから小説を書いてくださいました!
ありがとうございます!!

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

【ひらひらり】

「あれが噂の巡音御前か」
「何と美しい。またなんという舞の見事さよ」
京で人気の美しい白拍子の舞は貴族も帝さえも夢中にさせていた。
数多い白拍子の中でも今をときめくのは若く美しい巡音御前。
美しい容姿に加えて、歌声はこの世のものかと思うほど妙なる美声の持ち主だった。
彼女こそが都一の白拍子と呼ばれ、折あるごとに帝は彼女に舞わせた。
御所の紅葉賀の宴で巡音御前は唐紅の衣装を身に纏って舞を舞う。
舞い落ちる紅葉を受けて舞う様子は天女のように美しかった。

「ここが都か・・・」
関東の主家から密命を受けて上洛した侍・がくぽは初めて見る都の美しさに目を見張った。
街並みもさることながら、なにより豊かな自然に囲まれている。
折しも秋の盛り、山々は紅葉に染まり炎のように赤い。
黙って見ていれば、この都が近いうちに争乱の中心として戦火に焼かれるとはとても思えない。
今、京都は将軍の跡継ぎ問題で後ろ盾の東と西の守護代に挟まれて緊張状態にある。
がくぽの主君は高野山の大師に鎮護国家修法の依頼と京都の情勢をさぐる役をがくぽに任せた。
最初は京都を美しいと思っていたがくぽだが、下京と呼ばれる地区に足を進めるにつれてその考えを改めた。
建物も通りがかる人々も美しく素晴らしいのは上京と呼ばれる貴族や将軍などの上流階級のみ、それ以外の人々は治安も悪く粗末な場所で浮浪者のような生活を送っている。
その浮浪者に混じって明らかにきな臭い連中、おそらくがくぽと同じく間者らしい者も何人か見かけた。
思ったよりも事は水面下で着々と進んでいるようだ。
唯一、上京と下京で等しく美しいのは紅葉だけだった。
夕日に照らされて穏やかな光を受けている紅葉に幾分か心を和ませたがくぽは主君への報告書をまとめ上げる。
宿をとるのも物騒だから、今宵はこの紅葉の下で休むのも悪くはない。
夜も更けるのにつれて喧噪も聞こえてきた。
世が荒れるとここまでひどいものなのか、主君が乱世を憂う気持ちがわかるような気がする。
がくぽがまどろみながらそんなことを考えていると、女性の叫び声が聞こえた。
その声にがくぽは弾かれたように身を起こす。
今の悲鳴はそう遠い場所ではない。がくぽは刀を手に取ると悲鳴の元を探す。
細い辻の向こうで怪しげな人だかりを見つけた。
鮮やかな着物を着た女性を男達が囲んでいる。
先程の悲鳴は囲まれている女性のものに間違いなかった。
「離してください!!」
「よいではないか。白拍子なら殿方の言うことを聞かねばならぬのだろう」
「どのみち都は終わるのだ。ならば何をしても咎められん!!」
そう言って男のうち一人が女性に手を伸ばす。
恐ろしさに女性が身を強ばらせた刹那、男の絶叫が耳をついた。
顔を上げると男は側で倒れている。
背後にいた青年の太刀は鞘に納められていたから失神しているだけだろう。
相方を倒されて怒ったもう一人が青年に斬りかかる。
青年はそれを紙一重でよけると振り下ろされた相手の刀を鞘で抑え、空いた手で抜刀すると抜き身の刀を相手の喉元に突きつける。
力の差は歴然だった。
がくぽは一言冷たく言い放つ。
「命が惜しくば、失せろ」
刀を納めると相手は倒れた相方をその場に残して這々の体で走り去る。
気絶している男は放っておくとして、がくぽは女性の様子を確認した。
別段、乱暴をされた形跡はないが座り込んで動かない。
「大丈夫でござるか?」
がくぽの言葉に女性は顔を上げる。
初めて見た女性の顔にがくぽは思わず息をのんだ。
若いながらも落ち着いた風情を漂わせていて美しい。こんな場末にいるのが不似合いなほどだった。
立てますか?と手を差し伸べる。すると女性は我に返ったようで慌てて頭を下げた。
「失礼いたしました。助けていただいたのにお礼も申せず、ありがとうございます」
「礼には及びませぬ。女人がかのような場所で一体何をしておられた?」
「宴の帰りですの。私、こう見えてもその名の知れた白拍子でございましてよ」
そう言って彼女は得意そうに笑った。
街では芸名を巡音御前と名乗っている女性、ルカは元々下京の出身だった。
初心を忘れず芸を磨くためにも、幼い頃から育った下京から離れずに過ごし、貴族達からのお召しがあるごとに上京まで出向くのだという。
「物騒なことをなさる。御身に危険があればどうするつもりなのだ」
「それもそうですけど、舞と唄で人々の心を癒したい気持ちには勝てませんもの。では、ひとさし・・・」
そう言ってルカは懐から舞扇を取りだして構える。
「あ、いや、我はそんなつもりでは・・・」
「構いませんわ。こんな場末、誰も気に留めませんもの」
ほがらかに笑ってルカは都一と謳われた舞を披露し始めた。
月明かりの元、紅葉柄の袖を翻して舞い踊るルカの姿はこの世のものとは思えないほど美しい。
がくぽは静かに舞い踊るルカから目を離せなかった。
夢のような一時が終わり、ルカは舞扇をしまう。
改めて頭を下げると、礼を述べる。
「本当にありがとうございました。これは礼と言うことで・・・」
「あっ!待たれよ・・・」
去ろうとしたルカをがくぽは思わず引き留めた。
ルカは足を止めてがくぽを振り返る。
『まもなく都は戦火に包まれる、その前にお逃げなさい。』
その言葉が喉の奥でつかえて口に出せない。
主君の命令でこのことは内密にするようにと言われていた。
だが、このまま黙っていてはルカは間違いなく死ぬ。
「・・・よろしければ、我と越後に来ませぬか」
辛うじて口に出来たのはそれだけ。
戦火に包まれる前に都から連れ出せば安全だし、ルカの舞なら越後でも人気を博せる。そう思っての誘いだったが、ルカはあっさり首を振った。
「素敵なお誘いではありますけど、無理ですわ。お召しがまだまだ控えておりますもの」
暇が出来たらいずれ、と言い残して立ち去っていくルカをがくぽは止めることが出来なかった。

その僅か二日後、東西両軍は京都でぶつかり合い戦場になった。
その日は皮肉にも御所で宴を催していた日だった。

「・・・気がつかれたか?」
重い頭でうっすらと目を開いたルカの目に心配そうに覗き込む碧い瞳が映った。
少しずつ状況が整理できてきたルカは目の前の侍に淡く微笑む。
「また、あなたに助けられましたわね・・・」
宴の最中に戦いの火蓋は切って落とされ、御所はあっという間に火に包まれた。
燃えさかる炎にまかれ、逃げ場も無く死を覚悟したルカだったが、一陣の風のように炎を抜けてルカを救い出したのは先日の侍だった。
まるで疾風のように突然現れた青年、もう一度会いたいと思っていただけにひどく嬉しかった。
起き上がったルカの目に焼けた京の都が見えて思わず愕然とした。
ルカの気持ちを察したがくぽは労るように優しくルカの背中を撫でた。
「正直に言わず、済まないことをした。我は国元からの命令で口外することを禁じられていたから・・・」
「だから・・・、ああ言ってくださったのですね。私を、生かしてくださるために・・・」
がくぽは頷いてルカを抱きしめる。
ルカはその手を拒まず、逆にその手に自分の腕を重ねた。
相手の気持ちも自分の気持ちも、もはや同じであることに気がついていたから拒む必要などどこにもありはしない。
がくぽはルカに手を差し伸べた。
「そなたを攫って、遠く連れ去ってもよろしいか?」
がくぽの申し出にルカは今一度焼け野原になった故郷を見る。
思い残すものなど何一つ残っていない故郷に今更名残も感慨も浮かばない。
ルカはがくぽの手をとった。
「連れ去ってください。あなたの側なら、どこへでも・・・」

乱の後、京から散逸した文化は地方へと広がっていき、果ては地元独自の文化として根付いた。
越後に根付いた舞も数多くの人々を魅了し、見るものの心を癒し続けた。

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